トピックス
2004/03 13

2003年度活動報告特集

 2003年度も、“エネルギー使用総量を小さく”という小エネルギーのコンセプトのもと、小学校への出前授業・エコサイト見学会等、自然エネルギー・省エネルギーの普及・啓発活動を行いました。1999年度から活動を開始以来5年が経過し、今年度は、日本テレビ系列の政府広報番組「新ニッポン探検隊!」、J−COM湘南のニュース番組「湘南ラウンドアップ」というの2つのテレビ番組と、小学館・湘南新聞社・生活クラブの機関紙から取材を受けました。3団体で共催の3月のエネルギーセミナーはこれからですが、それまでの活動をまとめてご報告いたします。
 昨年の夏は東京電力の原子力発電所の事故隠しが発覚し、多くの原子力発電所が停止し、電力不足が心配されました。エネルギー問題を国の政策に委ねきるのではなく、エネルギーを自らの手で創るという動きは各地で広がっています。RENの活動の中で出会った子どもたち・・・ 太陽の光から、また省エネすることで、電気は自ら創り出せるものと体感してもらえたでしょうか?


ちがさき自然エネルギーネットワーク
CHIGASAKI RENEWABLE ENERGY NETWORK(REN)

共同代表:河原崎裕子、上野ひろみ
TEL&FAX:0467−86−6807

E-Mail: yuco-k@jcom.home.ne.jp ホームページ:http://www.i-shimin.net/~ren/


1、茅ヶ崎小学校での出前授業

2003年5月22日

茅ヶ崎小学校4年生の理科「電池の働き」発展学習の「光電池のはたらき」に”学習ボランティア”として茅ヶ崎RENのスタッフ河原崎・上野・末永・杉村・西川で参加しました。
3クラス101名が3つのコーナーを順番に見て回りました。保護者の参加も多数ありました。
担当の福山先生が、梅田小学校にいらした時にも、出前授業をさせていただきました。今回も子供たちの感想文を送ってくださり、机の上だけでない熱心な指導に感心しました。以下、各コーナーごとに内容を報告します。J−COM湘南の取材もありました。

ソーラークッキング第1ゾーン「ソーラークッキング」
ソーラークッカーには蓄熱式と反射式があり、ゆっくり調理とスピード調理と使い分けると便利です。
写真の反射式パラボラ型クッカーでクレープを焼きました。
一つしか作らなかったので試食は無理でしたが、蓄熱式クッカーで3クラス分の鍋ごとプリンを作って給食時間に食べてもらいました。
お日さまで調理した味は格別です

おひさまから電気第2ゾーン「我が家は発電所」
自宅の屋根に太陽光パネルを設置しているメンバーが、“おひさまから電気”ということで話をしました。
「エネルギーについて考えよう」という所から始め、太陽光発電を利用すると地球温暖化防止に貢献できること・綺麗な地球を守れることなど、省エネの方法も含め、いろいろな資料を使って説明しました
クイズ形式で行なった「日本のエネルギー自給率」の答え「5%」に「えー」と驚きの声。

ソーラーパネル

おひさまと遊ぼう第3ゾーン「おひさまと遊ぼう」
太陽光パネル一枚でラジオが聞けたり、ポンプで水を吸い上げたりパネルに影が出来るとぴたりと水が止まったり、不思議体験にみんな次々にチャレンジ!!
ソーラーカーやミニソーラーパネルを使った様々なソーラーグッズをみて、さわって・動かして、みんな大喜び。


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2、浜須賀小学校「浜っ子パーク」に協力

8月6日(水)

 浜須賀小学校PTAスタッフでは、学校の空間が人と人や、人と自然とのつながりがみえる場であることを願い、スタッフ通信をコミュニティガーデンと名付けています。
 出来る人が、できる事をモットーに、エコスタッフ、自然観察会スタッフ、土づくりスタッフ、開き読みスタッフ等13のスタッフグループに分かれて活動しています。
 その活動の一環として、8月6日(水)午後13時から15時まで、浜須賀小学校校庭で、「浜っ子パーク」が開催されました。
 PTAの高橋玲子さんから、「子どもたちの遊びの中で、太陽や風をエネルギーとして体感させたい」とのことで出前展示に協力の依頼があり、河原崎、上野、杉村が参加しました。
 参加者は子供20名、PTAのお母さん方10名でした。教頭先生もご挨拶に顔を出されました。
 RENで用意した展示内容は次の通りです。ソーラーパネルで太陽の光を電気に変えて駆動する、「噴水ポンプ、ソーラーカー、ソーラーラジオ、パタパタとんぼ、オルゴール、扇風機」等のミニ装置です。これらを校庭に広げたシートの上で展示しました。これに子どもたちは群がり強い興味を示し、それぞれ自由に手にとって遊びながら学びました。太陽の光をさえぎると動きが止まってしまうことが珍しいようで、なんどもなんども興味は尽きることがなくくり返し操作していました。中にはソーラーカーのアンペアは幾らか、太陽光はどのようにして電気に変わるのか等の質問をする子どももいました。
 その他にPTAのお母さんが作った手製のソーラークッキング装置や鳥居式ソーラークッカー・市販されている「サンシェフ」等で、チョコレートを溶かしたり、ホットケーキを作ったりしました。その後、みんなでこれらの料理を味わいました。子どもたちと一緒に遊んだ楽しいひと時でした。「また来てね」との子どもとお母さんの声を聞きながら校庭を後にしました。
 自然エネルギーを活用することの大切さを、遊びを通じ子供一人一人に体感してもらい、興味をもってもらえればうれしいです。



3、環境フェアに参加

8月8日(金)・9日(土)

 文化会館を会場に、第3回環境フェアが行われました。RENは、自然エネルギーコーナーを担当・運営しました。ソーラーで遊ぶコーナーや、ソーラークッカーの展示のほか、パネル展示のコーナーは省エネをテーマに新たに作成した物や、会員の自宅に設置した太陽光発電のデータ−などを出展しました。今回の環境フェアは残念ながら、台風の影響で時折強い雨と風に見舞われました。今年から外で発電デモンストレーションができる事になっていましたが、8日の午後、やっとのぞかせた晴れ間に行なうことしかできませんでした。それでも、来場した親子連れの方など、興味を持って見てくれました。


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4、ソーラークッキングパーティ&TV取材

9月3日(水)

 日本テレビ系列の「新ニッポン探検隊!」という政府広報番組(提供:内閣府・資源エネルギー庁)を制作している所から、取材の依頼が飛び込んで来ました。午前6時30分から15分間というとても早い時間帯なのでご覧になる方は少ないようですが、この取材に合わせて、ソーラークッキングパーティーを行いました。この日は、J−COM湘南・小学館もみえてトリプル取材となりました。
 この番組は、毎回、その時々の行政施策に関連した話題を紹介しているのですが、今回は日本の未来を明るくする原動力として「新エネルギー」をテーマとした番組で、日本テレビアナウンサーの寺島淳司さんが現場リポート、タレントの早見優さんがスタジオで見てコメントするというスタイルで9月21日(日)に放送されました。
 松林にあるコミュニティはつでんしょ(おざさ医院)駐車場には、RENで作成したパラボラ型ソーラークッカー、その考案者でいらっしゃる東海大学の上原教授をはじめ、浜須賀小のPTAの方も、お手製のソーラークッカーを携えて集まってくださいました。自然エネルギーに関心のある町田の地域通貨グループもみえ、小笹先生も顔を出してくださいました。
 真夏の日差しが照りつけ、ソーラークッキング日和。パラボラ型では、チーズフォンデュー・ホットケーキ・蓄熱式ではご飯・カレー・かぼちゃ・プリンと豪華なメニュー。おいしく・楽しく、話もはずみました。

ソーラークッキングパーティ

 今回の様子は、茅ケ崎小学校での出前授業の様子と上野太陽光発電所も一緒に、「子供たちの未来にきれいな地球を残したい・・〜ちがさき自然エネルギーネットワークの取り組みから〜」として、J−COM湘南湘南ラウンドアップ(9:30,12:30,17:30,21:30)9月11日(木曜)〜17日(水曜)30分番組の中の特集(6分間)で、放送されました。


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5、エコタウンかながわ2003

9月13日(土)・14日(日)

 平塚市総合公園を会場に「エコタウンかながわ2003」が行われました。このイベントは神奈川県・平塚市の主催で行われ、たくさんのNGO・NPOをはじめ、企業・行政・省エネルギーセンター等も参加し、イベントブースの真ん中では、フリーマーケットも行われ、家族連れでにぎやかに開催されました。2日間とも、晴天に恵まれ、発電には絶好の日和でした。

エコタウンかながわ2003 

 RENのブースにおいでくださった川崎市地域女性連絡協議会(川女連)の方から、後日お電話で感想をいただきました。「太陽の力を、目で見て実感できて本当に感動しました。こどもたちにもコレだ!!とおもいました。こどもたちに素直に訴える最高の方法ですね。」とうれしいお言葉をいただきました。2日間スタッフとして参加したRENのメンバーも交代で、各ブースをまわり、情報収集ができ、勉強になりました。このようなイベントがあまり知られていないようで、もっと広報して、たくさんの人に来ていただきたいとスタッフからも声があがりました。


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6、第3回エコサイト見学会

10月7日(火)

「地域コミュニティで取り組む環境活動
 〜西浜小学校のソーラーパネルを利用したビオトープ〜

 西浜小学校創立50周年の記念事業として設置されたもののなかに、ビオトープや小さな滝があり、そこにはソーラーシステムが組み込まれています。子どもたちへの環境教育を意識したこれらの事業は、地域コミュニティの積極的な支援協力によって実現しました。
この事業を中心になって進められたお一人であり、現在も学校を支える地域のリーダーでいらっしゃる亀山計次氏のご案内でサイトを見学し、あわせて地域コミュニティのサポートの実践についてお話を伺いました。川合校長先生、嶋村教頭先生、熊沢氏にもいろいろ教えていただきました。参加者は14名でした。

1.見学要領
 日時    平成15年10月7日(火)10時〜12時
 場所    茅ケ崎市立 西浜小学校(児童数450名)
 案内者   亀山計次氏(南湖地区自治会連合会会長)
2.見学内容
以下の5サイトと校地内の田んぼや畑なども見学させて頂きました。
そのうち?〜?は創立50周年記念事業サイトで、平成11年に西浜小学校創立50周年記念事業推進委員会(熊沢委員長以下40名の地域の人からなる)が発足し、これらの事業サイトは平成14年11月に完成したそうです。事業化資金は、一口200円で学区の地域などから合計1,250千円寄付であつめ、主な支出は、ソーラーパネル2セットで400千円、アルミ製のパネル台200千円等だそうです。

  1. ソーラーシステムを活用した「ビオトープ」
    ・ソーラーパネル(ナショナル製)2枚(86Wx2)で
     直流電器をおこし素人が手づくりでビオトープを作った。
    ・水ロボット(荏原製水中ポンプ)を動かし、池の水を循環させている。
    ・池には「めだか」や「かえる」が生息している。
    ・生態系の保護が課題である。
  2. ソーラーシステムを活用した「にしはまの滝」
    ・ソーラーパネル(ナショナル製)2枚(86Wx2)を
     活用して電気で直流モーターを駆動し、水を循環させ滝にしている。
    ・日照状況により水量が変化する。
    ・水音が心地よく日常的ないやしの場になっている。
  3. 正門から教室正面までの花に囲まれた道
    正門から教室正面までに道の両脇に花が植えられており、児童は花に囲まれて登校している。                 
    ・デザインは、市内在住の専門家がボランティア協力し、
     たま石、植木などは地域住民が持ち寄り作業をおこなった。
    ・堆肥は鎌倉市から無償で取り寄せている。
  4. 花壇及び花の家
    ・花壇には種から育てた季節の花が年間を通して植えられる。
    ・「花の家」では苗床と園芸器具が収納されている。
    ・花壇や苗床の管理育成作業は地域住民によって行われている。
  5. くじら公園
    ・空き地を利用して造られた憩いの小空間である。
    ・花壇の手入れなどに訪れた住民等も利用する。
    ・くじら形の昇り台をメインに、発泡スチロール製の
     日よけ屋根の下には敷地内から出土した古い電柱を
     再利用したベンチがおかれている。

[その他]
・農・園芸作業等には、月に2回、50名〜60名(年間延1000人)の地域住民が参加している。
・雨水タンクを設置している。
・生ごみ処理機「ごみロボ」を設置している。(現在非稼動)

3.考察
 自然エネルギーの導入が環境教育はもとより、癒し効果をもたらしていることを実感しました。
 また、校内の環境整備や子どもたちの農作業指導などに日常的に多くの地域住民が関わっておられ、こどもたちを地域で育てていこうという雰囲気が伝わってきました。
 高齢化社会にむけて生きがいづくりを意識し、学校が住民に活躍できる場、趣味を生かせる場、社会参加の機会を提供していること、学校を核にして地域の人材の持てる力を引き出し、世代を越えて人々による地域交流の輪を広げていることに感銘を受けました。
 このようなすばらしい展開は、学校長、自治会役員などの地域社会のリーダーが、学校教育における地域コミュニティの果たす役割、学校が地域コミュニティの核として果たす役割などのコンセプトを共有して、学校運営、地域運営に当たっている成果であると思います。

ソーラーシステム

上の写真はビオトープの水を循環させる為のソーラーパネル。
後方に、雨水タンク。ビオトープは左側になる。


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7、第4回エコサイト見学会―逗子市―

10月18日(土)

 逗子市は、今年3月18日(火)市庁舎屋上に30kwの太陽光発電システムを設置しました。
 事業の目的としては、「二酸化炭素削減事業」(逗子市環境基本計画等で重点課題として挙げている1つ)として、市役所自らが太陽光発電を設置することで、市施設の電力需要削減の一助となるよう、また、二酸化炭素の削減に貢献し、広く市民へ啓発活動をするとともに新エネルギーの普及を目指すということです。
 また、2001年に環境ISOを取得、省エネルギー等CO2削減にも積極的に取り組んでいます。今回はソフトエネルギープロジェクトと共催で、以下のとおり表記見学会を開催しました。

屋上太陽光パネル
屋上太陽光パネル

屋上太陽光パネル

1 設置された設備の概要は以下のとおりです。

太陽光モジュール:最大出力 167W
多結晶 京セラ
パワーコンディショナー 三洋電機
設置状況     180枚で30.06kW 面積約230m2
設置角
 前列5度(54枚)
 中列10度(54枚)
 後列20度(54枚)
 最後列20度(18枚)
市庁舎2階の電気使用量の約3分の1をまかなう予定(市役所全体の約3%)
設置工事費:2,331万円  古河総合設備 施工
財源内訳:NEDO補助金(1/2)1,165.5万円
県補助金582万円
地方債520万円
一般財源63.5万円

2 発電実績

日射量
(kWh/m2)

出力
(kWh)

合計
使用電力量
(2)
(kWh)

CO2削減量
(kg-CO2)

2月

2.04

43.8

72.5

15.8

3

83.37

1919.2

3210.3

690.9

4

130.54

3028.6

5620.3

1090.3

5

137.30

3250.1

5063.0

1170.0

6

123..93

2894.5

5136.0

1042.0

7

106.35

2502.7

5030.1

901.0

8

136.30

3043.4

4411.3

1095.6

9

144.05

3139.1

4922.5

1130.1

10

42.98

977.0

2123.4

351.7

49
合計

2976.4

5030.6

1071.5

2976.4/5030.6
=0.5960%

発電実績は上の通りで、当初、2階の1/3を賄う予定が、約60%弱で予想以上の成績であったそうです。駐車場は無休で、年間通じ 発電量は使用量より少なく東電には売電していないということでした。
なお、今回設置は普及啓発を最大の目的としているので、設計の段階からNPO (ソフトエネルギープロジェクト)と協働し、見やすい表示装置の設置や今後の見学会等に配慮されており、市役所ホールに現在の発電量などを示す表示パネルは、わかりやすいものとなっていました。



3 設置後の維持管理等について

 メンテナンスは必要なく、専門委託はしていないが、建築設備維持管理の一環として年2回程度点検しているそうです。
 風圧を避けるため、パネルの設置角を5度との通常の傾斜角よりは少なく、雨の洗浄効果が不足し清掃が今後必要と思われるようです。架台は、溶融亜鉛メッキとステンレスで耐塩耐久性があり、海の近くであるという設置環境に配慮されていました。
 ただ、コスト回収は30〜60年(修繕費込み)と採算は困難であるそうですが、公共施設としてCO2削減には貢献していることは間違いありません。

4 今後の予定

 平成17 年度までに市立小中学校8 校に計100kw の太陽光発電システムを設置する予定です。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO )の地域新エネルギー導入促進事業を利用しています。

5 見学を終えて

 コスト回収に30年以上要することは、太陽光発電普及の障害の原因でありますが、今後逗子市の普及啓発の目的通り普及が進みコストが低下、市民が無理しないで設置できるようになり、一挙に普及が進むようになることが望まれます。
 そのためにはまた、発電電力の買取価格のアップ、太陽光発電に有利な料金体系へ変更が必要であることを改めて痛感いたしました。
 一方、省エネルギー活動も温暖化防止のためには太陽光発電と同等の効果があり、費用を要さないで可能な方法はすぐにでも可能です。逗子市のようにISO14001を多くの自治体が取得、省エネルギーを徹底することも緊急の課題であると思われます。


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8、梅田小学校授業支援報告(計5回)

2004年2月10日

「想像してごらん2033年」
――持続可能な社会の道しるべ――

はじめに
 神奈川県では、「新アジェンダ21かながわ」の目指す「持続可能な社会かながわ」を実現するために、NPO等と連携して小学校において環境教育を行うことになった。
これに対し、RENでは、「新アジェンダ21かながわ」こども版を素材に、アジェンダに対する理解と参加を広める小学校におけるワークショップ展開に協力することになった。その授業は、2月3日〜6日までの4日間と10日の1日合計5日にわたって、梅田小学校6年3組で行われた。要点を以下の通り報告する。

1.授業要領

日  時:平成16年2月3日〜5日 9時35分〜10時20分
     平成16年2月6日     9時35分〜11時25分
     平成16年2月10日    9時35分〜10時20分
場  所:梅田小学校第6学年3組教室
実施者 :6年3組担任 日高大司郎教諭
参加生徒:6年3組34名
単元名 :「こんなまちに住みたいな」
   ―自分の出来ることをもう一度考えよう―
支援者 :河原崎・杉村(REN)
     益田和子(新アジェンダ21かながわ子どもプロジェクト)

2.「総合的な学習活動」内容(教諭側の思い)

1)単元について

  1. 児童の実態
    ○この学年の児童は、4年生の時、ゴミ・水等の学習から発展的に色々な学習を経験しており、「ちがさき自然エネルギーネットワーク(REN)」によるソーラーパネルの実験や省エネの話などを含む「光電池授業」も受けている。5・6年生でも、各教科において環境に関する学習を積み重ねてきており、環境問題に関し比較的関心がある。
    ○現在環境が良くない事を知っており、アクションの必要性を漠然と理解している。
    ○人間の行動次第で、環境は良くなるとはっきり理解している子どもが数名いる。しかし大半は、自分の生活の中で行動をおこし努力しようとする姿勢が希薄であり、今回の単元の狙いはここにおく。
  2. 単元の意図
    ○環境改善の必要性の意識はあるが、自分のライフスタイルの改善も含めての実践に結びつける認識を持たせたい。
    ○環境問題について、地球規模の問題と小さなコミュニティレベルの問題をリンクさせて学習し、知識として身につけさせるとともに、環境問題の主役は「人間」であるとの「意識」と「行動」が必要である。これを理解させたい。

2)単元目標

自分の行動が環境を変えて行くのだという意識をもたせ、自分に何が出来るかを考え、実践できるようにする。

授業中

3.時限ごとの授業目標と結果

第一回(2月3日)
 目標:千の川の過去(48年前)と現在の写真を比べて環境を悪化させたのは、人間であるという事を認識させる。同時に川以外の環境の事も考えさせる。
 結果:昔(48年前)と現在の「千の川」を比較すると、大変汚れている。その原因は、

  1. 人口増→開発行為増
  2. 生活排水の量増
  3. ごみの川へのポイすて
  4. 田んぼの減少による土の保水力減等による川の水量減などあり。

いづれにしても川の汚れは人間に起因している事を理解した。

第二回(2月4日)
目標:「新アジェンダ21かながわ」について知り、未来の梅田がどうなってほしいか想像する。
結果:未来(30年後)の「千の川」がどうなっていくか想像する。環境の悪化の要因は人間であり、未来の環境をより良いものにするのも、又人間である事を児童の意見発表の中から引き出した。大人達のビジョン=かながわ地球環境保全推進会議製作「想像してごらん2033年」を声に出して皆なで順番に読み、アジェンダの行動計画の趣旨を理解した。30年後の「梅田のまち」は、どうなっていてほしいか考えよう!と言うことで、こうなってほしいという「梅田のまち」を絵に書くべくとりかかる。

第三回(2月5日)
目標:自分がこうなってほしいと考えた「梅田のまち」を発表しあい、仲間の考えを生かしながら、もっと範囲を広げて未来の「梅田のまち」を描くことができる。
結果:本日は支援者3名も児童達の中に入り、一緒に考え相談にのった。30年後の「梅田のまち」は、こうなっていてほしいという絵を相互に発表した。中には大変良いセンスと知識を持っている児童もいた。授業は、クラスを8グループに分けてワークショップ形式で進められた。具体的には「水、緑、空気、食材、ゴミ、エネルギー、技術、人、その他」の切り口で、未来の環境を守るために必要なキーワードをグループ毎に多数リストアップし紙に貼り付けた。

第四回(2月6日)
目標:
みんなで考えたメモをもとに、30年後の「梅田のまち」を描こう
結果:本日も支援者3名が児童達の中に入り、一緒に考え相談にのった。前日作成した未来の環境を守るために必要なキーワードを基にして、6つのグループに分けて、それぞれ大きな紙一枚の絵にした。そして最後にグループ毎に、全員が参加して絵の説明・発表をおこなった。
[各班での絵に描いた主な内容は次の通りである。]
 第一班:一枚の絵の中を農村と都市に二分して表現:

     農村:電気自動車、緑、川、魚、田んぼ、畑
     都市:ソーラーハウス、リサイクル装置、残飯処理機、緑の公園
 第二班:絵のアピールポイントは、川と海:
     ソーラー設備、水力発電、ごみリサイクル、田んぼ、畑、
     新鮮な野菜、みどりの木々
 第三班:人々は、環境の事を考えていると言う説明:
     風力発電、川、ソーラーハウス、水がしみこむ道路、
     ソーラーカー、田んぼ、野菜
 第四班:絵の中央に鉄道と川を強調:
     川をきれいに、鉄道の活用、ソーラー発電、風力発電、水力発電、牧草
 第五班:水の存在・意義をメインテーマに(川の水が飲めるように)
     川、魚、ソーラー発電、田んぼ、畑、無農薬野菜、
     し尿を発電に、たばこポイすて禁止
 第六班:川の存在を強調:
     コンポスト装置、買い物マイバック、ソーラーハウス、
     ソーラー発電、水力発電、花、木、
     街灯はすべてソーラータイプ、街中に自転車専用道路

第五回(2月10日)
目標:
絵に表した「梅田のまち」に近づけるために、自分たちにできることは何かを考え行動目標をもつことができるとともに,大人たちへのメッセージを考えることができる。
結果:今までの人間のあり方の集積として「今」がありこれからの「未来」もまた人間のあり方にかかっているということを再確認し、そこから人間はこれまでのいき方を見なおし新たな生き方を組み立てていく必要がある、この授業を自分の生活を変えるはじめの一歩としようという位置付けがされた。
 では具体的に絵に表した「梅田のまち」を実現するにはどんなやり方があるかという問いに対し、“合成洗剤を控える”“再利用(リサイクル)”“ごみひろい”“ごみを捨てない”“食器の油をふき取ってから洗う”等の意見が出た。
 次に、一人一人が、自分が今できる、取り組みたい行動目標を1つか2つ選び、「私の行動目標は***です」と言う形で順次立って宣言した。考えるヒントとして教諭から提供された行動目標リストも利用した。まだ取り組んでいないことを選び,実行できるようになったらステップアップしていくようにしようと言う説明もなされた。
 川を起点に考えたせいか、“節水”が最も多く、“節電”“マイバッグ持参”“昆虫の保護”と続き、“植物の世話”“カーテンなどを使って省エネすること”“環境のいろんな話を伝えること”“総理大臣に手紙を書くこと”等をあげる児童もいた。卒業まで記録しながら取り組みを続けることになリ記録用紙も配布された。
 次に子どもができることには限界があるとして,大人にやってほしいことを考えよう、ひとつのメッセージにまとめてメディアにのせ、大人へアピールしようというガイドが教諭からなされた。メディアに発信できることに対しては歓迎するコメントが多く発された。アピールする内容についてはイメージがすぐ沸かなかったが一生懸命考え“人間や動物たちがもっと住みやすいまちに”“市民運動を盛り上げよう”“兵器をなくそう”などの意見がだされた。
 教諭からも自分自身が取り組もうと思っている目標が話され、「みんなが変えていかなければ変わらない」、「一人一人が発信源になって、まず身近な家族や中学のクラスメートに伝えていこう,輪をどんどん広げていこう」という想いが伝えられた。
メッセージの集約はひきつづき学級で行われる。
 追記:2月20日の授業において、新聞紙上(3月24日神奈川新聞)で伝える大人たちへのメッセージとして、子どもたちは“人間や動物たちがもっと住みやすいまちに”を選んだ。

授業中

4.支援者所感

1)教室の雰囲気

  1. まず机の配置が黒板に向かって一斉に並ぶのではなく、教室の中で、グループ分けしやすいような配置になっており、教諭は、児童の机の前を常時巡回しながら語りかけ、児童を励ましている。
  2. 教諭は、上記のように時限ごとに授業の狙い・目標を明確にし、そのための教材(考え・討議するための参考資料)を精力的に準備している。

2)授業のやり方

  1. 教諭は、説明調で一方通行で行うのではなく、毎回テーマと資料を示し、児童に考えさせ、考えた事をメモにさせながら、順次発表させている。発表の順番も発言した児童の持ち回り指名方式である。それぞれの意見について児童同士でも意見交換が出来るよう教諭がコーディネートする方式をとっている。従い居眠りする児童、勝手な事を喚く児童はいない。中には、環境問題に関しかなりな知識をもっている児童もいた。
  2. 全体の脈絡を考え、毎回その線に沿った狙いを持ってステップバイステップで前進させている授業の進め方は大変良い。

3)総合印象

 児童が主体的に考える力、それを人前で発表する力を辛抱強く引き出すための教諭の工夫は、見事である。大変工夫された授業であった。
 また児童の発言に、環境や平和の学習を積み重ねてきた成果を感じさせるものがあった。
 ワークショップ形式での授業は、最初はどのようにまとめるのか心配したが、終わりの時間が近づくころには、それぞれそれなりのまとめが出来ていた。
もう少し児童の発表の声が「はきはき」として大きければ良かったと感じた。



Severn Cullis-Suzuki(セヴァン・カリス=スズキ)

 こんな大変なことが、ものすごいいきおいで起こっているのに、私たち人間ときたら、まるでまだまだ余裕があるようなのんきな顔をしています。まだ子どもの私には、この危機を救うのに何をしたらいいのかはっきりわかりません。でも、あなたがた大人にも知ってほしいんです。あなたがたもよい解決法なんてもっていないっていうことを。オゾン層にあいた穴をどうやってふさぐのか、あなたは知らないでしょう。死んだ川にどうやってサケを呼びもどすのか、あなたは知らないでしょう。絶滅した動物をどうやって生きかえらせるのか、あなたは知らないでしょう。そして、今や砂漠となってしまった場所にどうやって森をよみがえらせるのかあなたは知らないでしょう。
 どうやって直すのかわからないものを、こわしつづけるのはもうやめてください。

編集後記
 上記のメッセージをご存知ですか?1992年のリオでの地球環境サミットで、当時12歳の少女が、世界各国のリーダーの前で行ったスピーチの一部分です。私たち大人は、子どもたちにどんな未来を手渡せるでしょうか?現実を知る事・・・そして行動に移す事・・・RENも微力ながら、がんばってます!! (U)

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